縁起ものとして愛でられてきた晩白柚
職人の丁寧な加工が味の決め手に
八代市の贈答品といえば、明るいイエローが目を引く、大玉の果物・晩白柚。その見た目から“縁起もの”として、八代地方・氷川町で栽培され、日本全国はもちろん、海を渡って台湾でも珍重されています。「晩白柚は、毎年12月頃から収穫の最盛期を迎え、お正月飾りの一つとしてピカピカに磨き上げたものを、玄関や床の間に飾っていました」と懐かしそうに話すのは、八代で生まれ育ち、幼い頃から晩白柚が身近な存在だったという古川江利子さん。「祖父母が晩白柚農家だったこともあり、いつからかその存在を全国の方に知って欲しいと思うようになりました」と愛おしむように晩白柚を見つめる視線が印象的です。そんな古川さんが働く「氷川町まちづくり振興会」が運営する「氷川町特産品加工センター」では、晩白柚の一次加工をメインに、自社が運営する「道の駅竜北」で販売するお菓子やパンなどの製造を行っています。「晩白柚の加工は、少々コツが必要ですが、晩白柚は捨てるところがないほど多彩な楽しみ方ができる果物なんですよ」と話す古川さん。「氷川町特産品加工センター」で行う晩白柚の加工は「HACCP」に則り、クリーンルーム内で行う加工に至るまでに、水道水、電解水、真水と、3度の洗浄を経ています。分厚く見える外皮は、実際は薄く、大量には取れない貴重な部位。職人がピーラーで剥き、内皮の状態になったものを8等分に切り分け、そこから、種と果肉、内皮と部位ごとに丁寧に掬い上げます。気の遠くなるような手作業の連続ですが、この手作業こそが加工後の味を左右する重要な部分でもあるのです。
“食べにくさ”という個性を囲むことで
生まれる温かなコミュニケーションの輪
最も香りのいい外皮は、お菓子の香り付け。白く分厚い内皮は砂糖で炊き上げ“ザボン漬け”や自然由来のペクチンとしてジャムなどのとろみ付けに。果肉や果汁は、ゼリーやジュースなど、それぞれが晩白柚の魅力を余すことなく伝える商品へと生まれ変わっていきます。晩白柚特有のさっぱりとした甘味苦味を生かした味わいは、大人のスイーツとして評判を呼んでいますが、中でもジワジワ人気を集めているのが、令和元年にリニューアルした「晩白柚もなか」。白餡に晩白柚角切りコンポートを練り込み、食感をあえて残すことで晩白柚本来の味と香りを内包するもなかは、上品なお茶請けやお土産として重宝されています。
ここで作られている商品の多くは、加工所から車で10分ほどの距離にある「道の駅竜北」で購入することができます。「晩白柚は、縁起物なので、他県の方にも贈るのですが、皆さん驚かれますね。贈った後に、剥き方をレクチャーする、そんな時間も楽しいものです」と古川さんが語るように、晩白柚は一見すると食べにくい、不便な食べ物かもしれません。けれども、その奥にある唯一無二の味わいや、その個性である“食べにくさ”を囲むことで生まれる、温かなコミュニケーションこそが最大の魅力と言えるのかもしれません。
有限会社 氷川町まちづくり振興会(氷川町特産品加工センター)
住所 八代郡氷川町鹿島1624−1
電話 0965−52−0035
道の駅竜北
住所 八代郡氷川町大野875−3
電話 0965−53−5388
営業時間 ショップ 9時00分〜18時00分、レストラン11時00分〜15時00分、ファーストフード10時00分〜17時00分
定休日 第2水曜(但し、祝日の場合は翌営業日)
https://www.michinoeki-ryuhoku.com(外部リンク)